財産分与の方法

夫婦が婚姻中に築いた財産の中には、預貯金等や不動産が混在していることが一般的ですので、離婚時に財産分与を行うに際しての方法は金銭給付に限らず、現物給付でも良いとされ(最判昭41・7・15)ており、一時払いでも、分割払いでも構いません。

ただ、金銭を支払う財産分与の場合、統計によれば一括での支払いと短期間(2回から5回払い)での分割払いが9割程度を占めていますので、一括での支払いか短期間での分割払いが一般的と言えます。

不動産

預貯金等の金銭ならば一括で支払うにしても、分割で支払うにしても分けることは可能ですが、マンションや土地等の不動産を半分に分けることは現実的には難しいので、以下のような財産分与の方法が考えられます。

住宅ローンが残っていない場合

1 不動産を売却して、その売却益を夫婦の寄与度に応じて分配する

不動産の売却額が3000万円、寄与度を半々とするならば、その不動産を売却して得た3000万円を半分にして、夫と妻が1500万円ずつ取得する方法です。

2 一方がその不動産を取得し、相手方の寄与度に対して金銭を支払う

不動産の現在の価値が3000万円、寄与度を夫6妻4とするならば、離婚後は夫がその不動産の名義を取得するとした場合には、夫から妻に3000万円の40%である1200万円の現金を支払う方法です。

なお、不動産の現在の価値を正確に調べるには、不動産鑑定士に依頼する必要があるのですが、鑑定費用がかなり高額になることから、一般的には近所の不動産屋さんに見積もりを出してもらうことで対応することが多いです。

住宅ローンが残っている場合

不動産を購入する際には住宅ローンを組むことが普通です。

そのため、上記のように、夫婦の共有財産である不動産に住宅ローンを完済しているケースばかりではなく、特に若い夫婦が離婚する際には、住宅ローンの支払いが残っていることが多々ありますので、その場合は以下のような財産分与の方法が考えられます。

1 不動産を売却して、売却額から住宅ローンを支払い、その残額(売却額-住宅ローン)を分配する

不動産の売却額3000万円、残ローン2000万円、寄与度は半々とするならば、その不動産を売却して得た3000万円から残ローンを支払い、その残額である1000万円を半分にして、夫と妻が500万円ずつ取得する方法です。

また、不動産の売却額2000万円、残ローン3000万円、寄与度は半々とするならば、その不動産を売却して得た2000万円から残ローンを支払っても更に1000万円の債務が残りますので、その1000万円を半分にして、夫と妻が500万円ずつ負担する方法です。

なお、妻に多額の現金を支払う経済力がないような場合には、不動産の売却額から残ローンを支払っても残った債務については、夫が負担するということも多いですし、夫婦の経済力に応じて残った債務を負担(例えば夫が8割負担、妻が2割負担など)することも考えられます。

2 一方がその不動産を取得し、残ローンも負担する

不動産の現在の価値が3000万円、残ローン2000万円、寄与度は半々とするならば、離婚後は夫がその不動産の名義を取得し、残ローンも引き受けるという場合には、不動産の現在の価値から残ローン額を差し引いた差額が財産分与の対象となります。

ということは、3000万円(不動産の現在の価値)-2000万円(残ローン)=1000万円が財産分与の対象となり、それを夫婦の寄与度に応じて分けるので、妻は500万円の財産分与を受ける計算となります。

つまり、夫から妻に500万円の現金を支払うという方法です。

不動産の現在の価値が2000万円、残ローン3000万円、寄与度は半々とするならば、こちらも基本的には上記と同じ計算方法で、離婚後は夫がその不動産の名義を取得し、残ローンも引き受けるという場合には、不動産の現在の価値から残ローン額を差し引いた差額が財産分与の対象となります。

ということは、2000万円(不動産の現在の価値)-3000万円(残ローン)=-1000万円が財産分与の対象となり、それを夫婦の寄与度に応じて分けるので、今度は妻から夫に500万円の現金を支払うという方法です。

なお、妻に多額の現金を支払う経済力がないような場合には、不動産の現在の価値から残ローンを差し引いても残った債務については、夫が負担するということも多いですし、夫婦の経済力に応じて残った債務を負担(例えば夫が8割負担、妻が2割負担など)することも考えられます。

3 一方がその不動産に住み続け、他方が残ローンを負担する

上記のように杓子定規に清算するのではなく、子供や妻のためにと考えて、経済力のある夫が住宅ローンを負担しながら、妻と子供がそのまま不動産に居住し続けるという方法もあります。

また、この場合において、無償で妻子が住み続ける他に、ある程度の家賃を支払って居住するということも考えられます。

しかし、夫がきちんと残ローンを支払ってくれている間はいいのですが、急に気が変わってしまったとか、失業等により住宅ローンが支払われなくなった場合には、抵当権が実行される(住宅ローンを組む時に通常は抵当権も設定されています)ことで妻子はその不動産より立ち退かなければならない危険があります。

家具等

冷蔵庫、洗濯機、エアコン、タンス等の家具類に関しても、夫婦のいずれかが独身時代から所持していたものはその人の特有財産となりますが、婚姻中に築いた財産であるならば、当然に清算的財産分与の対象となります。

そのため、不動産を財産分与するときと同様に、厳密にはそれらの現在の価値を評価し、その現在の価値を寄与度に応じて分与することになるでしょう。

しかしながら、そこまで厳格に分与することはあまり一般的ではなく(むしろ例外中の例外)、冷蔵庫は妻、洗濯機は夫という具合に、それぞれが必要なものを話し合って分けることが多いです。

また、それらの家具類の分与方法が決まったとしても、それを離婚協議書に記載することなく、事実上の合意に委ねることが一般的です。

生命保険

掛け捨て型の生命保険に関しては財産分与の対象となりませんが、貯蓄型の生命保険に関しては生命保険金の満期が到来していれば財産分与の対象となります。

また、保険料支払い途中であっても、生命保険には資産運用の性質もあることから、財産分与の対象になると考えられております。

なお、満期到来前の生命保険が財産分与の対象となるかについては争いがあり、以下のような判例もあります。

  • ※参考判例1 (東京高判昭61・1・29)
  • これら(生命保険金)は、将来夫に退職又は死亡等の事情が生じ、その事情いかんによって夫が一定の給付を得られるか否かが定まるものであって、このような不確定的要素の多いものをもって夫婦の現存共同財産とすることはできない

離婚に際して、保険料を支払い中である生命保険の取り扱いについては、以下のような方法が考えられます。

  • 1 生命保険を解約せずに継続し、受取人を子供や親族に変更(通常は配偶者が受取人になっているでしょう)する。
  • 2 生命保険を解約せずに継続し、離婚時点における解約返戻金を保険会社に算出してもらい、その額を財産分与の対象とする。
  • 3 生命保険を解約して、解約返戻金を財産分与の対象とする。

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