有責配偶者からの離婚請求

以前は婚姻関係の破綻につき主に責任のある配偶者(有責配偶者といいます)は、婚姻関係が破綻して回復の見込みがない場合であっても、離婚を請求できないという判例(最判昭27・2・19)がありました。

「もし、かかる請求(有責配偶者からの離婚請求)が是認されるなら、(妻は)全く俗にいう踏んだり蹴ったりである。法は、かくの如き不徳義勝手気ままを許すものではない」という理由です。

その後、同居期間が12年で別居期間が36年の夫からの離婚請求に対して、以下のような離婚請求を認容すべきであるとの判決が出て、判例が変更されました。

  • ※参考判例1 最判昭62・9・2
  • 夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない。

一定の要件のもとに離婚が認められるようになった

上記昭和62年の判例変更以降、一定の要件のもとに、有責配偶者からの離婚請求を認容する判決(離婚を認める判決)が次々と出るようになっています。

一定の要件とは以下のものが挙げられます。

  • (1)夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居していること
  • (2)夫婦間に未成熟子がいないこと
  • (3)相手方配偶者が離婚により、精神的・経済的・社会的に極めて苛酷な状態に置かれないこと

「夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居していること」とは

「相当の長期間」というのは、具体的にどれくらいの期間を指すのかは必ずしも明確ではありません。

例えば、同居期間が23年、別居期間が8年の事例において、諸般の事情からみて「別居期間の経過に伴い、当事者双方についての諸事情が変容し、これらの持つ社会的意味ないし社会的評価も変化したことが窺われる」として、別居が夫婦の年齢や同居期間との対比において相当の長期間に及んだと認める余地があるとする判例(最判平2・11・8)があります。

その他にも、30年(最判昭62・11・24)、22年(最判昭63・2・12)、16年(最判昭63・4・7)、10年(最判昭63・12・8)などでも、相当の長期間の別居ということで離婚請求が認められています。

さらに、短いものでは約6年(東京高判平14・6・26)の別居で離婚請求が認められているものもあります。

逆に、双方の年齢(夫60歳、妻57歳)や同居期間(22年)を考慮すると、別居期間が8年では相当の長期間に及んでいるものということはできないとされ、離婚請求が棄却された判例(最判平元・3・28)もあります。

その他にも、15年の別居で離婚が認められなかった判例(大阪高昭62・11・26)、婚姻期間18年に対して11年の別居期間は長期間とはいえないとして、離婚が認められなかった判例(東京高昭63・8・23)があります。

「夫婦間に未成熟子がいないこと」とは

原則として、未成熟子=未成年と考えていただいてもいいのですが、必ずしも未成熟子=未成年といえない場合もあります。

例えば、夫婦間に未成年者の子供がいたとしても、その子供は大学生で寮に入って生活しているので未成熟子ではないとした判例(大阪高判昭和62・11・26)があります。

ただ、この判例では離婚が認められていません(上記の15年の別居で離婚が認められていない判例と同じです)。婚姻費用分担の審判確定後も強制執行を受けるまで支払わないという不誠実な態度を取り続けたこと、離婚は妻を精神的・経済的窮状に追い込むことになることなどが理由です。

逆に、夫婦間の子供が成人に達していたとしても、その子供には四肢麻痺の障害があり、身の回りの日常生活全般にわたり介護が必要であるので、実質的には未成熟の子と同視できるとした判例(東京高平19・2・27)があり、離婚をすれば子の介護・福祉等に一層の困難を生じさせ、子の介護をしてきた妻が離婚により精神的・経済的に極めて過酷な状況におかれるものとして、離婚請求は棄却されています。

「相手方配偶者が離婚により、精神的・経済的・社会的に極めて苛酷な状態に置かれないこと」とは

別居期間中に相手方配偶者に婚姻費用(生活費)を送っていることや、離婚の際には将来的に相手方配偶者が生活に困らないように、十分な財産分与を行い、慰謝料もきちんと支払うということです。

つまり「もう別居しているのだから生活費は渡さないぞ」とか「離婚後の生活まで俺は知らないよ」というような不誠実な有責配偶者からの離婚請求は、仮に夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居していて、夫婦間に未成熟子がいない場合であっても、認められない可能性があるということです。

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