離婚協議書

離婚協議書とは、親権、養育費、慰謝料、財産分与、年金分割等の子供やお金に関する離婚の諸問題や、離婚後の双方の約束事などを記録し、離婚問題解決後の争いを未然に防ぐために作成する書面です。

タイトルは、一般的に「離婚協議書」とすることが多いのですが、契約書、合意書などとしても問題ありません。

極端な話、タイトルなしでいきなり本文が記載されていてもいいのですが、タイトルがあると書面が全体的に締まると思いますので、タイトルは入れたほうがいいでしょう。

また、離婚協議書、契約書、合意書など、どのようなタイトルを記載しても法的な効力には何らの変わりがありません。

作成の重要性

離婚協議書のような堅苦しい書面を作成しなくてもいいのでは?と思われる方も多いと思いますし、確かに離婚時に離婚協議書を作成しなければならないという法律上の決まりなどはありません。

しかしながら、離婚協議書を作成しない場合において「養育費は月々5万円、財産分与は今月中に300万円、慰謝料は来月中に100万円を支払う」という合意があったとしても、それらの金銭が本当に支払われるかは定かではありませんし、そもそもそのような合意があったという証明が難しいです。

実際にそれらの金銭が支払われなかった場合に「そんな約束した覚えはない」ととぼけられてしまう可能性が高いと言えます。

養育費、慰謝料、財産分与等の金銭を受け取る側からしますと、上記のような口約束だけでは金銭が本当に支払われるか、そのような合意が本当にあったのかとぼけられるなど不安が残ることになります。

しかし、離婚協議書を作成しておくことによって支払いを確保できる可能性が高まりますし、合意の存在を相手方が否定できない状態を作ることができます。

また、養育費、慰謝料、財産分与等の金銭を支払う側からしましても、きちんとした離婚協議書を作成しておけば「この前の慰謝料だけでは足りないのでもう少し支払ってください」「よく考えたら財産分与はもう少し欲しい」などと、後日再度請求される心配はなくなります。

なお、離婚するに際して、養育費、慰謝料、財産分与等の金銭が発生しないと双方が合意したとしましても、慰謝料の請求権は離婚後3年間、財産分与の請求権は2年間ですから、離婚後に請求される可能性がゼロとは言い切れないものがあります。

そのため、仮にお互いに離婚に伴う金銭を請求しないとしましても、双方が何らの請求権も有しない旨を明記した簡単な離婚協議書を作成しておくべきです。

夫婦のどちらが作成するか

離婚協議書は、夫婦のいずれが作成しても問題ありません。

夫あるいは夫が依頼した専門家が作成した離婚協議書を妻に提示して署名捺印を求めてもいいですし、妻あるいは妻が依頼した専門家が作成した離婚協議書を夫に提示して署名捺印を求めてもいいわけです。

離婚協議書に記載された内容に夫婦の双方が合意した後に署名捺印することになりますので、相手方が作成した離婚協議書が気に食わなければ署名捺印しなければいいだけだからです。

しかしながら、どちらかと言うと作成した側のほうが有利です。

特に、不倫等をして離婚原因を作った側の人は、一般的に離婚交渉における立場は弱く、相手方が提示してきた離婚協議書に異議を出しにくい状態にありますので、積極的に自分の希望する条件で離婚協議書を作成して提示するほうがいいと言えます。

また、相手方が異議を出してこなければその離婚協議書に署名捺印することになるのですから、異議が出てきたらすぐにその条件は引っ込めよう、あるいはその条件は訂正しようぐらいの気持ちで、離婚協議書の作成者側は最初に自由な条件を記載することができます。

この観点からも、離婚協議書の作成者側が有利と言えます。

記載事項

一口に離婚と言いましても、いろいろなケースがあります。

離婚原因は一方のみにあるのか、それとも双方に離婚原因があるのか、婚姻中に築いた財産にはどのようなものがあるのか、夫婦間に子供がいるのかなど、離婚する夫婦によって異なりますので、これらの状況によって離婚協議書に記載する内容は異なります。

ですから、「離婚協議書には何を記載すればいいのですか?」と聞かれても「その夫婦によって異なります」という回答しかできないのですが、一般的に以下のような条項を記載します。

1 協議離婚の合意と離婚届の提出

夫婦双方が協議離婚することに合意した旨と、離婚届は市区町村役場に夫婦が揃って提出してもいいのですが、通常は一方のみが市区町村役場に出向いて提出しますので、離婚届を夫婦のどちらがいつまでに提出するかを記載します。

2 親権

夫婦間に未成年の子供がいる場合は、夫婦のいずれかを親権者と決定しなければ離婚届を提出できません。

そこで、未成年の子供の親権者は誰であるのかを離婚協議書にも記載しておきます。

3 養育費の額と支払方法

養育費は一括で支払われることは稀で、通常は継続的に月々支払われることになりますので、いつからいつまで養育費をいくら支払うかについて離婚協議書には記載します。

また、養育費は銀行口座等に振込の方法にて支払われることが一般的ですので、養育費が振り込まれる金融機関口座と各月のいつまでに(末日など)振り込む必要があるのか、振込手数料はどちらが負担するのかも離婚協議書に記載しておきます。

次に、養育費を支払う側や受け取る側の再婚等によって家族関係が変更された場合、失業等や物価の大幅な変動によって経済状況が変わった場合には、養育費の額について改めて協議する旨を記載しておいたほうがいいでしょう。

その他、養育費を子供が高等学校を卒業するまで支払うという取り決めをした場合には、仮にその子供が高等学校卒業後に大学、短大、専門学校等に進学したら、その入学金や授業料等の費用負担や、養育費を支払う期間を延長するかなどについても、別途協議する旨を記載しておいたほうがいいと言えます。

4 面接交渉

離婚後に子供と生活を異にする親が子供とどの程度の頻度(月に1回など)で面接交渉するかについては当然明記しておくべきです。

また、その他にも運動会や入学式等の学校行事への参加はできるか、面接交渉を行うにあたって父母間の連絡方法(面接交渉希望日の1週間前までにメールで連絡するなど)はどうするか、決められた面接交渉日に子供の体調等が悪い場合はどうするかなどについて、離婚協議書に記載しておきます。

5 慰謝料の額と支払方法

精神的損害に対する賠償金のことを慰謝料と言いますが、一般的には、「慰謝料として金○万円」と記載し、「精神的損害として金○万円」とは記載しません。

この慰謝料を一括で支払えるのであれば、「平成何年何月何日までに支払う」と記載することになるでしょうが、分割になる場合は、月々いくら支払うのか、あるいは最初の支払い時にいくら払い(頭金のような意味合いです)、残りを月々何万円ずつなどと記載することになります。

また、支払い方法に関しては、どのような方法をとるかも記載しておく必要があるでしょう。

銀行振り込みが一般的ですので、慰謝料が振り込まれる口座と振り込みの手数料はどちらが負担するのかも離婚協議書に記載することをお勧めします。

6 財産分与

財産分与は現金で給付する場合と現物(不動産等)で給付する場合があり、現金で給付する場合は上記の慰謝料と同じ点を注意していただければ問題ありません。

一方、不動産を現物で給付する場合には、登記簿謄本に記載されている通りに離婚協議書に明記したうえで、その不動産の所有権を移転する旨、所有権移転登記手続き費用(登録免許税、司法書士報酬等)を夫婦のどちらが負担するか、住宅ローンが残っている場合の処理方法などを記載します。

また、家具や家電については、冷蔵庫は妻、洗濯機は夫という具合に、それぞれが必要なものを話し合って分けることが多く、離婚協議書に記載することなく、事実上の合意に委ねることが一般的です。

7 年金分割

夫婦が離婚するにあたり、婚姻中の厚生年金や共済年金の納付記録を分割することができる制度を年金分割と言いますが、この年金分割を行うかどうかと、その分割割合(按分割合)を離婚協議書に記載します。

8 債権債務の不存在条項

離婚協議書は話し合いで解決した様々なことを記録し、離婚問題解決後の争いを未然に防ぐために作成するものですから、紛争の火種を残しておくことは避けるべきです。

そのため、この債権債務不存在条項を入れておくことをお勧めします。

この債権債務不存在条項は、「もうこの離婚協議書に記載した以外では、お互いに何の債権債務もありませんよ」という意味です。

もっと分かりやすい言葉なら「もうこの離婚協議書に記載した以外では、お互いに何かを請求する権利もないですし、何かを支払う義務もありませんよ」という意味です。

9 強制執行認諾約款付公正証書作成の合意

まずは「強制執行認諾約款付公正証書」とは何かということからです。「きょうせいしっこうにんだくやっかんつきこうせいしょうしょ」と読みます。

慰謝料や財産分与、養育費が一括で支払われる場合は、強制執行認諾約款付公正証書にする意味はあまりありませんが、一般的に養育費は継続的に月々支払われるものですので、そのような継続的な分割払いになる場合に威力を発揮します。

例えば養育費を月々5万円支払うという内容で離婚協議書を作成したとします。

離婚協議書を作成しただけの状態で月々の養育費の支払いが止まった場合、その離婚協議書を証拠にして「夫は毎月5万円ずつ支払うと約束したのに、支払いをしない!」と裁判所に訴訟を起こして「あなたは離婚協議書で約束した通り、毎月5万円ずつ支払いなさい」という判決をもらわなければ、強制的に取り立てることはできません。

つまり、判決を得た後に、強制執行の手続に移り、養育費支払義務者の財産や給与を差し押さえるなどして支払いを受けることになります。

ところが、離婚協議書を作成した後に、それを強制執行認諾約款付公正証書にしておけば、上記の訴訟を省略することが可能です。

つまり、支払停止→訴訟→強制執行という順序を、支払い停止→強制執行という具合に、いきなり給与差押等の強制執行が可能なのです。

ここで一つ注意していただきたいことは、強制執行認諾約款付公正証書は「支払いが滞った場合に、いきなり強制執行されることに同意します」という公正証書です。

つまり、この公正証書を作成するには、債務者(養育費、慰謝料、財産分与等を支払う側)の同意が必要なので、債権者(養育費、慰謝料、財産分与等を受け取る側)が勝手に作成することはできません。

この強制執行認諾約款付公正証書は、公証役場で作成してもらいます。全国に公証役場は多数ありますが、そのどこで作成しても構いません。

例えば、一方は神奈川県に住んでおり、他方は千葉県に住んでいる場合などは、双方の中間地点である東京都にある公証役場で作成することも可能です。

その際は、事前に双方が署名捺印した離婚協議書を原案にして、公証役場で強制執行認諾約款付公正証書を作成することになります。

また、公正証書作成は無料ではなく、公証役場に手数料を支払うことで作成してもらえますが、この費用が数万円必要な場合もあります。

ですから、この公正証書作成に要する費用は夫婦のどちらが負担するのかについても、離婚協議書に記載しておくことをお勧めします。

弁護士や行政書士等の専門家に依頼する意味

一般の方が作成した離婚協議書は、無効な記載が非常に多く見受けられます。

極端な例ですが、「養育費を払えなければ、死にます」などという離婚協議書を作成し、署名捺印しても、それは公序良俗に反して無効です。

私が実際に相談者の方から見せていただいた離婚協議書で一番すごかった(?)ものは、「慰謝料を支払えなければ、腕を切り落として保険金で払います」というのがありました・・・当然、その条項は公序良俗に反しますから無効です。

つまり、そのような離婚協議書に署名捺印したところで、実際に慰謝料が支払われなかったとしても、債務者(慰謝料を支払う側)は腕を切り落とす必要などありませんし、債権者(慰謝料を受け取る側)は腕を切り落とすことを要求することも不可能です。

上記以外にも、無茶苦茶な離婚協議書をよく見受けます。「離婚協議書を作成したけれど、養育費を払ってくれないのですが」というご相談が、当事務所に毎日のように来ます。

その離婚協議書を拝見すると、無効な記載や、読む人によって何とでも取れるようなあやふやな記載が多く、折角作った離婚協議書が紙切れ同然のようになっていることもあります。

離婚に伴う養育費、慰謝料、財産分与等の金銭給付を受ける側にとっては、離婚に至っただけでも大変な精神的苦痛を受けているのに、そのうえ養育費、慰謝料、財産分与等の支払いを受けることができなくなった、それも離婚協議書の作成ミスで・・・というようなことになれば、最悪の事態でしょう。

また、離婚に伴う養育費、慰謝料、財産分与等の金銭給付を支払う側にとっても、きちんとした離婚協議書を作成しておかなかったばかりに、一旦慰謝料や財産分与を支払ったのに、「足りない!」などと1年後ぐらいに言われて、また請求されて嫌な思いをする可能性もあります。

このようなことにならないためにも、離婚問題解決にかける予算の都合もあるでしょうが、経済的に許されるなら、弁護士又は行政書士に作成依頼されたほうが安心です。

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