離婚の慰謝料

離婚に伴う慰謝料には、離婚原因となった個別的有責行為(不貞行為や暴力等)によって精神的苦痛を被ったことに対する慰謝料と、相手方の有責な行為によって離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことに対する慰謝料があるとされています。

前者は離婚原因慰謝料であり、後者は離婚自体慰謝料です。

ただ、実務的には離婚原因慰謝料と離婚自体慰謝料を明確に区別することはあまりなく、個別的有責行為の発生から離婚に至るまでの一連の経過を一つの不法行為として、これによる精神的苦痛を賠償するものが一般的な離婚の慰謝料と言えるでしょう。

なお、上記のように離婚原因慰謝料にしても、離婚自体慰謝料にしても、あくまでも慰謝料を請求される側に有責行為あるいは有責性が認められなければ、離婚の慰謝料は発生しないことになります。

そのため、夫婦の離婚原因で一番多いのは、趣味が合わないとか価値観が違うなどの所謂「性格の不一致」ですが、このような場合は原則として離婚の慰謝料は発生しません。

算出要素

離婚慰謝料算出について法律上の具体的基準というものはありません。

不貞行為があったから○万円、婚姻期間が○年だから○万円というように、数学のように答えを出せる問題ではないのですが、離婚慰謝料算出の要素として一般的に以下のものを総合的に考慮して算出されます。

  • ・個別的有責行為(不貞行為や暴力等)の程度
  • ・婚姻期間
  • ・同居、別居の期間
  • ・社会的地位や年齢
  • ・子供の有無
  • ・被害者の精神的苦痛の程度

判例

  • ※離婚慰謝料500万円(仙台地判平13・3・22)
  • 夫は約27年間公務員として勤めて定年退職し、妻は約25年間会社員として勤務して退職した者であり、夫が不倫をした上、不倫をやめるよう頼んだ妻に暴行し傷害を負わせた事例において、夫から妻に慰謝料500万円の支払いを命じました。
    なお、夫の不貞行為の相手女性にも、慰謝料300万円を支払うように命じました。
  • ※離婚慰謝料200万円(神戸地判平6・2・22)
  • 妻は中国籍、夫は海上保安庁勤務の日本人、同居期間約5年の事例において、夫の妻に対する暴力により、妻は左眼窟吹き抜け骨折、鼻骨骨折、上顎骨骨折の傷害を負わせたことで、夫から妻に慰謝料200万円の支払いを命じました。
  • ※離婚慰謝料300万円(東京地判平16・1・30)
  • 夫はフランス人、妻は日本人、同居期間約2年半の事例において、夫の妻に対する度重なる暴力により傷害を負わせたとして、夫から妻に慰謝料300万円の支払いを命じました。
  • ※離婚慰謝料150万円(岡山地津山支判平3・3・29)
  • 再婚同士で婚姻したものの9ヶ月で協議離婚し、夫は妻の性交渉拒否を理由に、妻は夫の異常な言動(前妻のことを何時までも言うなど)を理由にそれぞれ慰謝料を請求したところ、裁判所は婚姻破綻の原因は妻の性交渉拒否にあるとして、妻から夫に慰謝料150万円の支払いを命じました。
  • ※離婚慰謝料200万円(東京高判平3・7・16)
  • 夫は元会社員、妻は料理教室を経営、同居期間約17年の事例において、夫の妻に対する暴力行為や婚姻期間途中から生活費を負担しなかったことにも婚姻破綻の責任は相当あるが、妻の2年間に及ぶ不貞行為が婚姻破綻を決定的なものにしたとして、妻から夫に慰謝料200万円の支払いを命じました。

財産分与との関係

財産分与は民法768条を、慰謝料は民法709条及び710条を根拠として請求するのですが、判例(最判昭46・7・23)によれば、「財産分与請求権と慰謝料請求権はその性質を必ずしも同じくするものではないから、すでに財産分与がなされたからといって、その後不法行為を理由として別途慰謝料の請求をすることは妨げられな」いとしております。

しかし、「財産分与によって請求者の精神的苦痛がすべて慰謝されたものと認められるときには、もはや重ねて慰謝料の請求を認容することはできないものと解すべきである」ともしております。

つまり、婚姻中に築いた財産を清算する清算的財産分与がなされただけである場合や、財産分与に慰謝料の要素を含めていても被害者の精神的苦痛を慰謝するには足りない場合においては、別途慰謝料を請求することが可能ということです。

逆に、清算的財産分与に加えて被害者の精神的苦痛を慰謝するに足る慰謝料的財産分与もなされたのであれば、別途慰謝料を請求することはできないということです。

ですから、後日の紛争を防ぐために、協議離婚や調停離婚をする際、「夫は妻に金○万円を支払う」と決めるのであれば、必ず離婚協議書(協議離婚の合意内容を記載した書面)あるいは調停調書(調停離婚の合意内容を記載した書面)に、その金○万円は慰謝料であるのか、財産分与であるのか、あるいは慰謝料と財産分与を含むものであるのかを明記しておくべきなのです。

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