第三者の慰謝料

離婚の慰謝料は、夫から妻、あるいは妻から夫という具合に、一方の配偶者から他方配偶者に対してのみ支払われるとは限らない場合があります。

というのも、離婚に至る原因を作ったものが配偶者だけとは限らず、配偶者以外の第三者が関与して婚姻関係を破綻させることもあるからです。

類型

配偶者以外の第三者が関与して婚姻関係を破綻させるケースは、以下のような類型に分類されます。

夫婦の一方が第三者と不貞行為(不倫)を行った場合

離婚の慰謝料を第三者に請求できることがある典型的な事例としては、配偶者が他の異性と不倫関係(不貞関係)に陥り、その不倫(不貞行為)が原因で夫婦の婚姻関係が破綻して離婚に至った場合です。

もちろん、一番悪いのは妻(又は夫)がいながら他の異性と肉体関係を持った夫(又は妻)であるのですが、夫(又は妻)の不倫相手が肉体関係を持つことに加担したことも離婚に至った原因であるからです。

他方配偶者の親族からの嫌がらせ等があった場合

配偶者が他の異性と不倫関係に陥る以外で離婚の慰謝料を第三者に請求できる事例としては、姑の嫁いじめ、舅の婿いじめ、同居親族による性的いたずらなど、他方配偶者の親族からの嫌がらせがあります。

不倫とは?

不倫とは何か?どこからか?という答えは人それぞれ違うと思います。

男女が二人で食事やお酒をともにするだけで不倫と感じる人もいるでしょうし、肉体関係まで至っても遊びなら不倫ではないという人もいる(本気で好きになることは許せないということでしょうか・・・)ようです。

しかし、法律上の不貞行為の定義は判例によれば「配偶者のあるものが、配偶者以外の異性と、自由意思で肉体関係をもつこと」です。

そのため、同性と肉体関係があった場合(異性ではないからです)、配偶者が脅迫等をされて無理やり肉体関係を持たされた場合、デート、食事、キスなどはしたが肉体関係を持っていない場合などは、原則として不貞行為には該当しません。

この不倫とは何か?ということについては、こちらの不倫慰謝料相談室のほうで詳しく説明しておりますので、ご確認いただければと思います。

配偶者の不倫相手に慰謝料を請求できる条件

例えば、夫が他の女性と肉体関係を持ち(不倫をして)、その不倫が原因で婚姻関係が破綻し、夫婦は離婚に至ったとしましょう。

この場合、妻から夫に対して離婚の慰謝料を請求できるわけですが、夫に対してだけでなく、夫の不倫相手に対しても以下の条件を満たしていれば、慰謝料を請求することが可能です。

1 不倫相手に故意又は過失があること

不倫問題において、故意とは「相手に配偶者がいることを知っていながら」ということで、過失とは「相手に配偶者がいることを注意すれば知ることができた」ということです。

この故意と過失に関することでよく問題になるのは、配偶者のある者が「自分は独身だ」とウソをついていて、不倫相手がその配偶者のある者を独身者だと信じた場合です。

同じ勤務先で不倫関係に陥るケースなどにおいてはあまり起こり得ない話ですが、近年はネットなどで男女が知り合う場が提供されていますので、そのようなケースでは問題になることがあります。

このようなケースにおいては、相手の言動などから相手を独身者と信じたことが一般社会人の常識から考えて無理もないと認められるときは、不倫相手には過失がないと考えられますから、慰謝料を請求することはできません。

なお、交際の当初においては独身者と過失なく信じていたとしても、その後の言動などから既婚者と分かったときには、相手を既婚者と認識して以降の関係は故意によるものと考えられますので、慰謝料請求が可能となります。

また、配偶者のある者から「近々離婚する」と言われて、その言葉を信じて肉体関係を結んだ場合も一般的には故意があると考えられます。

ですから、仮にそのような言葉を信じて不倫相手は肉体関係に至ったとしても、慰謝料を請求することは可能です。

2 違法性があること

違法性は、家庭生活上の平和を破壊したことにあると考えられています。

常識的に考えましても、普通の感覚を持っている人間であれば配偶者に不倫をされた場合、非常に傷つき、食事も喉を通らなくなることや、精神的に不安定な状態になることが多く、このことが不倫によって家庭生活上の平和を破壊したといえます。

3 不貞行為と損害の発生に因果関係があること

不貞行為と損害の発生に因果関係がなければ、配偶者の不倫相手に慰謝料を請求することはできませんが、配偶者の不倫相手の不貞行為によって、配偶者に不倫をされた他方の配偶者(不倫の被害者)の精神的平和が乱されたなら、損害が発生したといえます。

なお、不貞行為によって婚姻関係が破綻して離婚に至るような目に見えるような損害が発生していなくとも、不貞行為があったことを知ることによって、配偶者に不倫をされた他方の配偶者の精神的平和を乱されて精神的苦痛を受けたのであれば、損害は発生しているわけですから、配偶者の不倫相手に対して慰謝料請求は可能です。

4 婚姻関係が破綻する前に不貞行為があったこと

例えば夫婦仲が冷え切り、離婚を前提とした別居をはじめた後に、配偶者が他の異性と不貞行為をした場合に、他方の配偶者は不倫相手に対して慰謝料を請求できるでしょうか?

この場合は、原則として慰謝料請求は認められません。

夫婦間で離婚を前提とした別居をしている以上、婚姻関係が既に破綻しており、配偶者の不倫相手に対する関係で保護の対象となる「婚姻生活の平和の維持という権利」がなくなっているからです。

なお、家庭内別居程度では、婚姻関係が完全に破綻しているとまでは一般的にはいえません。

子供から親の不倫相手に対する慰謝料請求

例えば夫が他の女性と不倫をして、その結果夫婦が離婚に至った場合、夫婦間に子供がいればその子もまた不倫の被害者であるといえるでしょうから、子供から親の不倫相手に慰謝料を請求することは可能なのでしょうか?

しかし、子供から親の不倫相手に慰謝料の請求は原則としてできません。

  • ※参考判例 最判昭54・3・30
  • 妻及び未成年の子のある男性と肉体関係を持った女性が妻子のもとを去った右男性と同棲するに至った結果、その子が日常生活において父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなったとしても、その女性が害意をもって父親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り、右女性の行為は未成年の子に対して不法行為を構成するものではないと解するのが相当である

つまり、原則として子供から親の不倫相手に慰謝料を請求することはできないけれども、不倫気相手が親子の交流を積極的に妨害したなどの特段の事情があれば、慰謝料請求が認められる余地もあるということになります。

他方配偶者の親族からの嫌がらせ等

姑の嫁いじめ、舅の婿いじめ、同居親族による性的いたずらなど、他方配偶者の親族からの嫌がらせによって、円満な夫婦関係が破壊され、その家庭生活上の平和が侵害されたときは、不法行為が成立して、姑や舅などの加害者に対して慰謝料を請求することが可能です。

ただし、これは客観的にみて姑(舅)が夫婦関係に干渉し、積極的に離婚に至らしめたといえるような事実が必要になります。

ただ単に「このみそ汁は味が濃い」とか「掃除のやりかたも知らないの」などの嫌味を言う程度では、積極的に離婚に至らしめているとまではいえませんから、姑(舅)に対する慰謝料請求は難しいと考えられます。

他方配偶者の親族からの嫌がらせ等に対する慰謝料額は千差万別ですが、一例として、夫の父による性的な悪戯による判例(横浜地判昭51・2・3)では、夫の父親に対して50万円(現在の価値で82万円程度)の慰謝料が認められております。

また、夫の悪意の遺棄と夫の母による嫁いじめによる判例(名古屋地一宮支判昭53・5・26)では、夫と夫の母親に対して200万円(現在の価値で298万円程度)の慰謝料が認められております。

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